ジャパンクールと情報革命

ジャパンクールと情報革命 (アスキー新書 81)

ジャパンクールと情報革命 (アスキー新書 81)

別に帯の『なぜ涼宮ハルヒが世界で愛されるのか?』という文に釣られたわけじゃありません。
ただちょっと立ち読みして、"SF作家の谷川流――彼は私の勤務する大学の卒業生でもある"という文を発見し、「自分が通っている大学の教授なんだー親近感わくなー。」というわけで購入しただけです。
書評する前に、書評サイトをいろいろ見てみると目次を引用している人が多いようなので、自分もアスキーのサイトより引用。

■第1章 日本は「モノづくり」大国か?
最初の「情報社会」/日米で異なる情報社会/多様な情報社会の姿/ゴア副大統領と竹中大臣の違い/IT革命の後遺症/日本に残る「モノづくり神話」/IT革命は成功していた/あらかじめ予定されたマイクロソフトの敗退
■第2章 「涼宮ハルヒ」の教えたこと
涼宮ハルヒビル・ゲイツを超えた日/知的所有権は「表現」を守らない/伝統の発見と本歌取り/「お代は見てのお帰り」のビジネスモデル/
■第3章 工業社会の後に「情報社会」が来るという嘘――江戸時代は「情報社会」だった
「段階的発展説」の限界/学校では教えてくれない本当の世界史/社会転換の原因/産業革命は「革命」か?/情報社会の今、そこにある危機/遊牧社会こそ情報社会/「産業革命」の疑問/今日の情報社会を先取りした江戸時代
■第4章 「モノづくり社会」から「モノ語りづくり社会」へ
「IT革命」失敗の必然性/「鎖国的発想」の呪縛/知らない間に浸透した日本の情報革命/海外で評価される日本の「モノ語り」づくり/世界に広がるジャパンクール/アニメがきっっかけとなった欧米の日本文化熱/世界の若者はジャパンクールに向かう/GNPからGNCへ/「モノ語りづくり」の国、ニッポン
■第5章 東アジアの「モノ語りづくり」産業――台湾・韓国・中国へと伝播するジャパンクール
台湾の「哈日族」/ジャパンクールが集まる「台湾の渋谷」/八〇年代の日本を彷彿させる台湾のオタク事情/韓国の潜行するジャパンクール/韓国の若者がオンライン・ゲームに熱中する理由/混乱の中国市場は違法コピーの温床か?
■第6章 農耕社会・日本が情報社会に生きる道――アニメ・アニマル・アニミズム
「モノ語りづくり」の原点になっている美意識/表現手法の連続性/展開の連続性/歌舞伎からコミケに続く外伝の系譜/創作と享受の連続性/多色刷りの価値観/ジャパンクールの底流はアニミズム/日本独自のロボットアニメ
■第7章 情報社会のユーザーの姿を探る法――今振り返る江戸時代型「モノ語りづくり」
日本発の東アジア型情報社会へ/「一駅向こうの一筋裏の二階か半地下」に進路をとれ/「鳥の目」と「虫の目」/マニアックな人々の集合体の調査法/グーグルとソニーの決定的な違い/iPodはなぜ成功したか?/求められる江戸のビジネスモデル

涼宮ハルヒYouTubeを通して知れ渡った。日本はもっとアニメやマンガなど物作りではなく、物語り作りを重点にやっていくべきだ。というのが本書でいいたいことだろう。
「『モノ作り社会』から『モノ語り作り社会』へ」という例えはうまいと思ったが、内容はだいたいネットのあちこちで語られたことが多く、さほど目新しくはない。
ただ、理想とする情報社会を江戸時代と比較しているのが面白い。
ここの例に載っている一つが『源氏物語
源氏物語が作られたのは平安時代、1000年ほど昔になるが、それから数百年たった江戸時代、その時代に源氏物語のパロディ(今で言うMADや同人誌といったところか)が大量に作られ、民間に広まったという。
最後には江戸時代のビジネスモデルに今一度帰ってみるべきだと書き、この本は終わっている。
なかなかうまい例えだ。
日本はそもそも、昔から物語りが発達してきた国であり、『竹取物語』『源氏物語』『鳥獣戯画』など昔から物語を文や絵で表現してきている。
そして、今、涼宮ハルヒの憂鬱らき☆すたなど、インターネットを通し、世界で日本の物語が知れ渡るようになっている。
一昨日には国際ドラマフェスティバルという日本のドラマを海外へ発信していくイベントが開催されたらしいが、今後に注目したいところだ。
ただ、著者はモノ作りをやめてモノ語りヅクリに移行しろと主張しているのだが、個人的には日本のモノ作り社会にはもっと頑張ってほしいのだ。
たしかに、台湾や東南アジアなど部品が安い部分にシェアをうばわれていくかもしれないが、それでも、日本の安心と技術力をもった商品開発には今後も頑張ってほしいというのが本音である。


なお、著者である奥野卓司さんのHPには講義で使ったパワーポイントファイルが掲載されているので、参考までに。
奥野卓司 研究室 Webサイト
この本と関連した内容も書かれています。


にしても、誤字脱字多すぎだろこの本。
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追記:今月号の月刊ビジネスアスキー(asin:B001ICI8OO)から『「枠」から「萌」〜江戸化するTOKYO〜』という連載ものを始めていらっしゃいます。
江戸ブーム(エド・はるみではなく)というのは初耳だが、江戸時代の文化について例を3つをあげており、それが今の江戸ブームに影響を与えているとのことだ。
石見銀山」「三国志」「日本橋
この連載を見ていると、江戸時代がすごい時代だと思わされる。
最後のほうには、"「江戸」は昔あったことではない。今そこにある「未来」だ"と書かれているほどである。
まあ、よくよく考えたら江戸時代なんて鎖国していてガラパゴス化だったんだろうから確かに今の日本と似ていたのかもしれない