給料分の仕事ができているかという話

自分のアルバイト先は843円という中途半端な時給なのだけれども、アルバイト中にときどき思うのははたして自分がここで働いていることによって1時間で843円以上の儲けがでているのだろうかということだ。
さすがに、自分じゃなくてもいいのではないか? とまでは思わないが、はたして自分がやっている仕事に843円以上の価値があるのかどうかと疑問に思うことがある。ちなみに、自分が入ったときには時給750円だったのだけれども、そのときはまあそんなもんかと思っていたりした。
そもそも、自分がやっている仕事はバックヤードの清掃(洗い物や床掃除など)と商品の値引きであり、お金が入ってくるような仕事ではない。
清掃は確かに大事だけれども、はたしてその分のアルバイトが必要だろうか。実際、パートさんや社員のかたがもうすこし時間を使えばすむような話ではあるし(実際、人数が少ないときには手伝ってもらうこともある)、今より丁寧にしなければだいぶ時間が短縮できるように思う。だいたい、今の時代、食器洗い乾燥機でも使えば一発なのだからそれを買えばすむような話ではないだろうか? わざわざ人がやる必要もないのでは?
値引きにしたって、あくまで損切りであって、値引くことによって価値を生み出すわけではないように思う。そりゃあ、売れないよりは値引きしてでも売れたほうがいいのは分かるのだけれども。それに、今よりも少ない量で売れば機会損失はあるものの、値引きする必要もないし、廃棄商品も少なくてすむだろうしいいのではないだろうか?
はたして、自分の仕事は必要なのだろうか? また、この1時間843円はいったいどこからきているのだろうか?


『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』で有名な山田真哉さんの本に『食い逃げされてもバイトは雇うな』という本があり、その続編が『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い』という本である。
これらの本では何がいいたいかというと、一人できりもりをしているラーメン屋があるのだけれども、一人できりもりしていて店に客がいるにも関わらず出前に出て行ってしまうことがある。その店は後払いしきなので、そういうときは客はテーブルにお金をおいてでていくわけなのだけれども、中には食い逃げする人がいるという。そのとき、バイトを雇ったほうがいいのか雇わないほうがいいのか。そういうことが書かれている本だ(もちろん、それだけではない。というよりむしろそれ以外のことのほうが多い)。
このとき、一時間に来る客の平均人数を2人、開店時間を10時間、客が注文する平均金額を1000円、客の20%が食い逃げするとすると、1日あたりの食い逃げの被害額は4000円となる。しかし、仮に時給800円のアルバイトを一人雇うとすると、そのバイト代は1日8000円となるので、むしろ食い逃げの被害にあったほうが損失が少ないという話だ。
食い逃げされると悔しい思いはするだろうけど、感情より勘定で考えた結果、バイトを雇わないほうがいいということだ。
しかし、ことはそんな単純じゃない。もし、アルバイトが食い逃げを止めるためだけにいる存在であれば上記の例でも問題はない。しかし、そのアルバイトにラーメンの作り方を熟知させれば、客の回転数をあげることもでき、その分売り上げも伸びる。また、食い逃げを許すといった選択をとった場合、その噂が広まればよけいに食い逃げが増えるかもしれないし、それどころかそのうちレジに入ってあるお金まで盗まれてしまうかもしれない。
そのようなことが書かれている。


それと同じように考えてみれば会社が自分に1時間につき843円も払ってくれる理由が分かるような気がする。
自分がいることによって、パートさんや社員が大目に働かなくてもいいことはもちろん、掃除をすることによってパートさんや社員さんが新鮮な気持ちで仕事を始めることができる。また、食器洗い乾燥機を買ったにしてもそれは食器を洗うことにしか使うことができない。たとえば、うちのバイトでは機械を分解してそれを洗い、それを組み立てるといった作業があるのだけれどもそれは食器洗い乾燥機ではできないことだ。値引きにしたって、値引きをすることによってお客さんはお得感を感じ、いい気分で店をでてもらえることができ、また来ようと思ってくれるかもしれない。また、絶対に売れるだけの商品を置いたところで商品が少ないような店にはお客さんも来ようとは思わないだろう。
だいたい、会社にとって一番重要なのはお客さんからの信頼ではないか。調理場がいつもキレイなわけじゃない、消費期限ギリギリでも値引かず売れなかったら廃棄するような店にはたして信頼性はあるだろうか。
うん、こう考えるとなんとなく自分は1時間843円の仕事をやっているんだぞ!という気になれるような気がしてきた。


でも、1時間843円じゃダメなのだ。それ以上の価値を会社に提供して初めて843円のお金をいただくことができる。
自分だってそうだ。銀行に入った1時間843円分の給料だけの価値を手に入れているわけではない。アルバイトをすることによって、効率を重視した考えをするようになり、また就職活動を経験した社員の方から就職活動に関するアドバイス経験談といった情報を聞くことができる。それに、ときどき余った寿司などをもらったりする。つまり、自分も給料以上の価値を得ているのだ。
社会人になってもこういう考え方をして仕事をしたいように思う。